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Go with the flow
Mike Singleton, relief captain, R/V Neil Armstrong describes the intricate dance of navigating ocean currents during scientific expeditions
海中の 放射性物質
ウッズホール海洋研究所の海洋化学者ケン・ベッセラーは、福島原発災害から数週間で調査航海を実施し、各分野・機関の科学者とともに、福島原発から放出された放射性物質が海中および海洋生物に含まれていないか調べた (写真提供:ケン・コステル、WHOI) » English Version 2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所からの放射性同位体の流出は、事故による放射性物質の海洋への流出として史上最大の量を記録している。その大部分は、原子炉から流出した放射性物質であるヨウ素131、セシウム134、セシウム137である。2012年11月、東京で2日間行われた「海洋放射能汚染に関する国際シンポジウム:海洋へ与える福島原発事故の影響を探る」において、ケン・ベッセラー博士が報告した。 ベッセラーによると、これらの物質はどれも長期的な健康上の問題を生じさせるが、ヨウ素131の半減期はわずか8日であるため、数週間で実質的に環境から消失するはずである。半減期がそれぞれ2年および30年であるセシウム134とセシウム137は、今後数年間から数十年間にわたって海水に残留する。 現在、海に存在するセシウムの大半は、米国、フランス、およびイギリスが1950〜1960年代に大気中で行った核兵器実験の名残である。それより量は少ないが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故からのもの、そしてイギリスのセラフィールド核処理施設からアイリッシュ海に投棄された長期に渡る低放射能レベルの廃棄物など特定の放出源からのものもある。 ただし、気象庁気象研究所の青山道夫主任研究官らの記録によると、日本の沖合における福島原発事故以前のセシウム137レベルは1m2あたり約2ベクレルで、世界でも最低レベルであったことがわかっている(1ベクレルは、毎秒1回の放射性崩壊イベントに等しい)。この背景に照らすと、2011年4月初めに測定された濃度はとくに警戒すべきものだった。福島原発の排水口付近の海水からは、1m2あたり最高6,000万ベクレルの濃度が報告されており、海生動物の生殖と健康に十分悪影響を及ぼす値であった。 福島に起源を持つセシウムの大半は、原子炉を冷却するため放水された数百万リットルの水が流出水または地下水として、海に流れ込んだものである。同発電所の建屋浸水で起こった大規模な漏水も、海へのセシウム流出源となった。4月初めに漏水が止められた後は、沿岸付近のセシウム濃度が劇的に低下した、と彼は言う。しかし、まったくなくなったわけではなかった。 「海洋混合による希釈により、濃度は短期間で十分バックグラウンドレベルまで低下するはずです。しかし、私たちが得たすべてのデータによると、現場周辺の測定値は今も1m2あたり最高1,000ベクレルと高いままです」。 ベッセラーは、その数値が環境にどれだけ影響を与えるかについての確認を急いだ。「1,000ベクレルといっても、セシウムの場合は大きな数字ではありません。たとえば米国環境保護庁が飲用水に定めている基準値より低いものです」。日本近海のセシウムがそのレベルであれば、海洋生物と人が被ばくしても安全だと彼は強調する。 「われわれは、直接的な被ばくより食物連鎖に取り込まれる可能性を心配しなければなりません」。もう1つの問題は、いまだ高レベルにある放射性セシウムである。「数値が横ばいになり、事故前より高レベルにとどまっているということは、福島原発から小規模ながらまだセシウムの流出が続いているということです」。 放射能の経路と速度 沿岸から離れた外洋では、まず風で海へ運ばれた大気からの放射性降下物による放射能が検出された。その風によって放射性降下物の80%以上が海域へ向かったため、陸上での放射能被ばくは限定された。 事故からわずか数週間後、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の本多牧生博士らによる調査航海により、福島から約1,900km離れた海域で、低レベルのセシウム137とセシウム134両方が検出された。これだけの短期間に海流で運ばれてくるにはあまりに遠い場所である。セシウム134は海中で自然に存在せず、半減期がわずか2年である。本多は、「この比較的短命なセシウム134同位体が検出されたことは、汚染が福島原発から来たものだという決定的な証拠です。核兵器実験あるいは福島原発事故以前の他の発生源から来たセシウム134は、すでに消失して長い期間が経っているはずだからです」と報告している。…